ジャズとクラシック音楽家の訓練法

先日、ジャズ作曲家でピアニスト、そしてまたライターでもある友人の宮嶋みぎわさんのスペシャルライブを見に行く機会がありました。みぎわさんとは2014年にウィークリービズ紙さんでこちらの記事の取材・作成をしていただいたことががきっかけで知り合いました。それ以来数回ほど当教室の記事を書いてくださっています。みぎわさんが書いてくださる記事は新聞で許されている限られた文字数の中でしっかり私が伝えたいと思っているメッセージを簡潔にまとめてくださるので大変嬉しいです。彼女の音楽や、音楽教育に対する理解力の深さもそんな記事のできにつながっているのかもしれません。

日本でしっかり仕事をしてキャリアをのばしていた彼女ですが、30代後半に思い切って渡米。ニューヨークで本格的にジャズ作曲の勉強を初め、5年が経ちました。コツコツと勉強をしてきたそんな彼女は近々CDを作成するということで、それに先駆け、新曲とバンドの紹介を兼ねたライブが先日ニューヨークの大御所ジャズクラブ、バードランドにて開催されました。

私は普段、自分の演奏活動で忙しいため、他の人のコンサートに行く機会はあまりありませんし、ジャズを聞きに行くことは更にまれなのですが今回はとっても楽しめました。みぎわさんの温かい人柄が染み出るライブ。8月にレコーディングをしてCDを出すそうですから発売になった際には皆さんどうぞお買い求めください!

ちなみに久々にジャズライブを見に行って少し考えたことがあります。『ジャズミュージシャンってあんなにアドリブできてすごいなー』と。ジャズは基本のメロディと和音(コード)進行が作曲されていて、バンドメンバーが順番にソロを演奏するのですが、そのソロは楽譜に書き出されていません。その曲のコード進行に乗っ取り、演奏しているその場で自分の感性やテクニックを使ってソロを作り上げます。クラシックの音楽家は全く違う訓練を受けているので、なんかテキトウに弾いてよ!と言われるととても困ってしまうのです。

クラシックでは数百年前に作曲された音楽を、作曲家が楽譜に記したとおり、正確に演奏することが重要です。楽譜に書かれているテンポ記号、音符や音符の長さ、強弱、リズムなどなど、全てをしっかり見て正しく演奏することを訓練します。それがだんだんできるようになったら初見で正しく弾けるように訓練します。仕事をしだすと、職場でぽんっと出された楽譜でもその場で正しくすべてを弾くことを要されることもあります。

ジャズミュージシャンからは逆に『クラシックミュージシャンって楽譜をきちんと読めてすごいなー!』なんて言われることがあるので、ジャンルによって目標が違い、演奏者のトレーニング方法が違うというだけのことなのかな、と思います。同じ音楽ですが、目標と訓練法が違うだけで生み出される音楽家の強みがこれほど違うというのは面白いことだな、と思いました。

作文の題名は「バイオリン」

いつもブログやコラムに書いているとおり、当教室ではバイオリンを通して生徒さん達の日々の成長を応援しており、何よりもお子さん本人の精神的成長を大切に考えています。先日、約1年半前からレッスンに来ている生徒さんのお母様が、学校で息子さんが書いた作文を見せてくださいました。圭祐君は土曜日に日本語補習校へ通っており、そこで今年一年の目標をテーマに書いた作文なのだそうです。ご両親と本人の許可をもらって掲載させていただきました。

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まず、作文の構成がとても上手なのですが、特に感動的なのは「一つ間違えても諦めないようにしたい」という目標!バイオリン習得の道にはたくさんの壁があり、圭祐君も何度も私と共にこの1年半、それを経験し、乗り越えてきました。「一つ間違えただけで気持ちが少しくるってしまう」くらい、バイオリンは決して彼にとって簡単な楽器ではないのです。そんな中でこの「諦めないようにしたい」という気持ちが生徒さん本人から発せられたのはとっても嬉しいことです。それだけでバイオリンレッスン大成功と考えてもいいでしょう。

先生としての仕事も簡単な仕事ではありませんし、私のレッスンのやり方でどれだけ効果があるのかも計りにくいのですが、この作文はこれまでやってきたレッスンを讃えるトロフィーのように感じます。これからも、バイオリンを通して生徒さんたちの成長のお手伝いを続けて行こうと、改めて決意させられました。

コラム 〜第14回〜

発表会の季節が迫ってきました。こちら欧米では学校の年度が6月に終了となるため、夏休み前に多くの音楽教室で「End of Year Concert」などと題して、生徒たちの1年間の練習の成果を発表する会が催されます。

当バイオリン教室でも5月に発表会を予定しており、生徒たちはそれに向かって一生懸命練習に励んでいます。今回は、お子さんが発表会に出ることの大切さについてお話ししてみようと思います。

私が子どもだった頃、発表会は毎回とても緊張して心臓がバクバクした覚えがあります。新しい発表会用の服と靴を買い揃え、そこで披露する曲を何週間も練習し、磨きあげました。楽しみな反面、緊張とストレスが伴い、二つの気持ちが入り混じった子どもの頃の思い出ですが、演奏が終わった後は達成感を感じました。

発表会は一人一人のお子さんがステージに立ち、脚光を浴びて輝ける場です。楽器を習得するにあたって、このような特別な場を定期的に設けてあげることはとても大切。普段のレッスンとは違う、特別なステージに立ち、日頃の練習の成果を家族や、お友達に見せるということは、いつも以上に丁寧な練習や準備、そして集中力を要します。発表会を目標に、計画的に練習する過程も経験の一つ。時間をかけて、ていねいに磨きあげた1曲をお客さんのために披露すると自信もつきます。

また、発表会はお友達の演奏を聞くことができる場でもあるため、お互いの長所や短所から何かを見習う機会にもなります。特に、小さなお子さんが大きなお兄さん、お姉さんの演奏を見て受ける影響は非常に大きく、「あんな風に弾けるようになりたい!」と、目標になったりもします。子どもにとっては洗練されたプロの大人の演奏を見るよりも、年の近いお兄さん・お姉さんの演奏の方が、より憧れの対象になるようです。

お父さん、お母さんをはじめ、ご家族、保護者の方にとって、発表会はお子さんの成長の節目を見られる機会ですね。毎日の練習を一緒にやってみていると、あまり大きな進歩を感じられないかもしれませんが、晴れの舞台に立つ我が子を見れば、前回の発表会からどんなに成長したか一目瞭然となるはずです。

先生は生徒さんたちの準備を冷静に見守りながらも、実は少し緊張してハラハラ、ドキドキ、。でも楽しみな気持ちが入り混じった発表会。一人一人の子どもたちが自分の一番良い演奏をできるよう、レッスン時の微妙な押し加減で本番へ持っていく応援をします。本番に強い子、普段以上に素晴らしい演奏をする子、緊張する子、などなど―。日頃のレッスンでは見られない一面を見る事ができ、発表会は生徒たちのこの先の課題を考えることへもつながります。

年度末のこの時期、様々な子どものイベントが行われ、忙しい時ではありますが、発表会も家族そろって楽しんでください!

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

コラム 〜第13回〜

毎週、レッスンをしていると時々、生徒達の進歩がなかなか感じられないことがあるのですが、数カ月前をふり返ってみると、とても大きく成長したことに気付くことがあります。

4カ月前、バイオリンを何とか自力で構えられるようになったものの弓はまだ正しく持つことができなかったお子さんが、今では音階が弾けるようになり、初めての曲まで覚え始めています。

日々、お家で練習を見ているお父さん・お母さんなどの保護者の方から見れば、週1回しか会っていない先生と比べ、お子さんの進歩はさらにカタツムリペースに感じられることでしょう。それでも毎日、少しずつ練習を繰り返していることによって一歩一歩、着々と前へ進んでいるのです。

習得に時間のかかるバイオリンに効果的なのは、すごく小さな進歩や成果を盛大に褒めてあげることです。

例えば、前回のレッスンでは曲を演奏している間に楽器がずるずる下に傾いてしまうことを先生に指摘・注意されたお子さんが、1週間の家での練習の後、前回よりも50%良く、楽器が下を向かないよう気をつけられたら大成功。「わーっ! この間よりずいぶん楽器をちゃんと構えられるようになってきたねー!」と思いっきり褒めてあげます。もちろん、50%の改善が見られたからといって練習は終わりではありません。更に残りの半分の改善を目指し、新たな1週間の練習を応援します。

でも、このような小さな進歩を積み重ねていくことが大事です。『ちりも積もれば山となる』という諺がありますが正にそのとおりで、目標の半分しか達成できなくても、このような小さな進歩を積み重ねていけば大きな成功と自信につながります。

中途半端にたくさんの楽曲を短期間に次々にこなしていっても、基礎的な細かいテクニックや音程が未達成に終わってしまいます。そして、いつか高レベルの曲に挑戦した時にうまく弾けない部分がたくさん見つかり、基礎的な姿勢、弓の持ち方、楽器の構え方などをやり直さなければいけなくなってしまいます。

バイオリンを含め、音楽やスポーツなど何事も『量より質』です。練習する時にただただ、曲を10回通して弾いたら終わり!ではなく、難しい部分を、メトロノームを使ってゆっくり丁寧に、先生に教わったとおり5回練習して、最後に1回全体を通して弾いてみる方が確実に進歩します。

子どもが「早くこれをやりたい!」とか、「すぐできなければ飽きてしまう」と感じることは自然なことです。でも、曲をたくさんこなしていくことだけがバイオリンレッスンの目標ではありません。1曲1曲を丁寧に習得することによってより確実に上達し、小さなお子さんでも自分がどれだけうまく弾けるようになったか、自覚も出てきます。確実な成果を上げるためには、どんなに細かく小さなことでも、お子さんの練習中に何か進歩が見られたら、たくさん褒めてあげましょう!

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんオンライン版に掲載されました。

プロオーケストラのオーディション

先日、私がヴィオラで正団員として活動しているモーストリー・モーツァルト・オーケストラでオーディションがあり、審査員として参加しました。退職していったヴィオラの団員さんの席を埋めるためのオーディションです。

これまで私は、高校生の頃に受けたユースオーケストラのオーディションから数えると、大学の入試や、プロのオーケストラに入るためのオーディションまで含め、20年間も受ける側に立ってきました。プロのオーケストラ奏者としての生活を夢見る若い音楽家にとって、オーディションを受けることは生活の一部です。次はいつ、どこで、どのオーケストラのオーディションがあるか常に大学の掲示板や、労働組合(ユニオン)のウェブサイトで情報を集め、応募し、受けるオーディションの曲目リストをもらって練習し、レッスンを受け、友人達の前で試し弾きし、さらにまた練習し、フライトやホテルを予約し、受けに行く。受からなかったらまたふりだしへ戻り、繰り返す。という生活。

楽団によっては一つの席に200人の応募者が集まることもあり、そういう場合はさすがに全員の演奏を聴くことは無理なので最初にテープ審査があったりします。

モーストリー・モーツァルトは夏だけ活動する楽団なので、地元ニューヨーク近辺に住んでいる音楽家たちがオーディションに招待され、さすがに200倍という倍率にはなりませんが、それでも20〜30倍くらいの倍率なので大学入試よりは過酷です。

アメリカのほとんどの楽団のオーディションでは平等性・公平性を確保するため、受験者の年齢、性別、顔、名前が審査員にわからないよう、スクリーンが間に設置され、お互い、反対側に誰がいるのか見えません。この状態で第一、第二選考、(第三選考があることも。。。)が行われ、さらに最終選考(ファイナル・ラウンド)があり、そこまで行くとたいていスクリーンが取り払われます。この段階では審査員が受験者に音楽的注文をすることもあり、フレキシビリティを試されます。

これを自分がやってきたのか、と今振り返るとなんだか信じられない気もしてきます。特に、自分が過去に経験したスクリーンの反対側に座ると、受験者の心境を想像し、「なんて厳しいんだろう!」と思い、変に緊張してしまいました。

しかし、これから一緒にして行く仲間を選ぶ重要なオーディションですから聞く方の仕事も大変重要です。一音も聞き逃さず、何十人も受けに来る奏者の中から一番良い人を選ばなければいけません。一番うまい人たちは皆素晴らしい音楽家で、それぞれに長所・短所があり、その中から一人だけを選ぶのは結構難しいことでした。朝9時から審査が始まり、25人のオーディションを聞き、夜8時頃終了し、結果、納得のいくヴィオリストが選ばれました。

今回は良いオーディション結果でしたが、場合によっては、数日間にわたる長いオーディションプロセスの結果、誰も選ばれないこともあります。楽団の気に入る候補者が誰もいなかった場合、勝者が選ばれないことがあるのです。私は以前、他の楽団のオーディションを受け、ファイナル選考まで進出した際、私かもう一人のファイナリストのどちらかが勝つ、というところで「誰も選ばれませんでした」という結果になったことが2回もあります。その時の悔しい思い!!!!何のためにこんなに練習時間とお金をかけたんだか、ばかばかしくも感じられます。せめて誰か選んでくださいよ!と思うのですが、しかし、選ばれなかったものに抗議しても仕方ありません。次のオーディションに向けて新たな道を歩み始めます。 

プロの音楽家としての生活は時には優雅に見えるかも知れませんが、その道は大変厳しいものです。ジュリアード音楽院に入るだけでも大変ですが、そこから音楽のみで生活を支えられるようになる人はさらに数が減ります。競争の激しい現実を知りながら、それでもキャリアとしてやっていきたいと感じるほど音楽が好きな人が成功します。子どもの頃のバイオリンレッスンは少しずつ進歩し、練習が辛いときでもがんばることに意義がありますが、プロの音楽家の道はそれに加え、生活がかかってくるのでより一層、真剣さが増します。私はそれでもこの道を選んで良かったと感じます。当教室からこの道を選ぶ生徒がいつか現れるでしょうか・・・・?

コラム 〜第12回〜

このコラムでは、皆さんにあまり馴染みのないバイオリンレッスンをお子さんが受けるにあたって、役に立つ情報を載せてきました。どんな習い事をするにしてもベストを尽くしたいという気持ちで参加されるのが当たり前ですが、バイオリンは他の習い事と比べ、お金のかかる習い事ですね。レッスンは一対一の個人レッスンが基本ですし、それに加えグループレッスンやオーケストラに参加したり、もっと上達すれば音楽理論のレッスンが必要になりますし、楽器は小さな分数サイズを体の成長と共にレンタル・買い換える必要があります。

経済的に負担のかかる習い事ですが、この楽器の音色に憧れたり、バイオリンを習う事によって得られるお子さんの心身成長への効果を期待してレッスンをご希望されるご家族が後を絶たないのは嬉しいかぎりです。

前回のコラムで、お子さんに「バイオリンのレッスンを与えるという事はお子さんの将来への投資です」と書きました。これはどういう意味なのでしょう? お子さんのバイオリンレッスンにお金をかけたら、将来それが倍になって返ってくる、(と嬉しいですが…)というわけではないのはないですね。バイオリンを習得し、上達するためには何年もの期間、休まず、そして諦めずに続けなければいけません。根気を育てるには最適の楽器です。

近年、アメリカでは「ミレニアル」と呼ばれる若い世代(厳密には1984年以後に生まれた世代)が企業などに就職しても、何か上手くいかないと諦めてすぐに辞めてしまう人が増えているのだそうです。なぜこのような現象がおこっているのでしょう? この世代を育てた大人たちは、自分の子どもが成績表に最高評価の「A」をもらえなかったら先生に抗議し、そのような厄介な親は先生の話を聞き入れず、先生は論争するのが苦痛なため、生徒が正当に受けるべきより高い評価を受けてしまうのだそうです。成績表だけではありません。運動などの競技に参加すれば、ビリでゴールしても参加賞のメダルを与えられ、サッカーなどの試合をやってもスコアを記録せず、勝ち負けのない試合をやり、参加者全員がトロフィーを抱えて帰るのだとか。私が以前担当したバイオリンの生徒さんの中には、せっかく1年間しっかりと成果をあげたのに、他の習い事を試してみたいなどという理由でやめてしまうお子さんもいました。1年間バイオリンを習っただけでは大した財産になりません。10年、15年、努力を積み重ね、習い続けてこそ価値ある音楽経験・人生経験になるのです。

子どもの頃に負けることを経験しなかったミレニアル世代。負けたら次の機会に勝ちたいと思い、勝つためにはどのような努力をしなければいけないのか教わらなかったのです。B評価をもらって悔しかったなら次はもっと勉強してA評価を勝ち取るためにがんばることを経験しなかった。これは決してミレニアル達のせいではありません。紛れもなくミレニアル世代を育てた大人たちの責任なのです。

子どもに自信を持たせてあげたいという親や先生の気持ちは世界共通だと思います。思ったより成績が悪かった、とか競技で失敗してメダルをとれなかったら、悔しいという思いをバネに努力しなければいけない。周りの大人はその子が次の機会に成功できるよう導き、勉強や練習する方法を教えてサポートしてあげなければいけない。それが本当の意味で子どもの自信を育ててあげることにつながるのはないでしょうか? 私の担当している生徒さんで、最初の発表会では演奏がうまくいかず、悔しい思いをしたお子さんがいました。その悔しい思いをバネに次の発表会でうまく弾けるよう、工夫した練習方法をするよう指導した結果、その生徒さんはとってもうまく演奏できて大きな笑顔を見せてくれました。自信がついた証拠です。一度や二度失敗しても、努力すればできるようになるんだ!ということを経験し、学ぶ。このような小さな成功を積み重ねていくことがお子さんの長い人生の財産となるのです。

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

最近のあれこれ

まずは、私もメンバーとして参加している、昨年夏のMostly Mozart Festivalのコンサートビデオがアメリカのテレビ局、PBSよりオンラインでストリーミング中なのでご紹介いたします。昨年2016年の夏がフェスティバルの50周年記念だったため、特別番組が収録されました。収録されたナマのコンサートでは、モーツァルトが8才のときに作曲した交響曲第1番と、最後に作曲された第41番「ジュピター・シンフォニー」、そしてピアノコンチェルトという内容です。

⬇コチラのリンクからどうぞ!

モーストリー・モーツァルトの50年




次に、あまりよく知られていない、弦楽器のメンテナンスについて。

小さなお子さんは体のサイズに合った分数サイズのバイオリンを使います。その際、こちらアメリカでは短期間のみ使用する楽器をレンタルできる便利なお店がたくさんあります。当教室にいらした生徒さん達にはレンタルをお勧めしていますが、たまにお父さんが子どもの頃使っていた楽器や、お友達に譲っていただいたバイオリンなどを使用する生徒さんもいらっしゃいます。

楽器は、家と似ていて、湿気や気温に敏感ですし、使わず放っておくと部分的に壊れたり、故障したりするので、常にメンテナンスが必要です。でも、クオリティの良い楽器を購入すれば、普段から丁寧に使い、きちんとお手入れしていれば、少しのメンテナンスで何十年も使い続けることができます。お子さんが自分のお父さんやお母さんが子どもの頃に使った楽器を代々引き継いで使っていけるのは親子ともにとっても嬉しいことですね。

プロの演奏家の場合、数100万円もかけ、(時には数1000万円も!)自分に合った、高いクオリティの楽器を探します。ほとんど家探しと同じです。何ヶ月も、時には何年もかけて自分にとってパーフェクトな楽器に巡り会えるまで探し続けます。

私のヴィオラは10数年前にこちらニューヨークの楽器屋さんで巡り会った楽器を使っています。この秋、突然、音が変になってきたので調整に行きました。こういう場合、ほとんどは魂柱(こんちゅう)の調整をしてもらいます。「魂柱」とは、ヴァイオリン属の楽器において、表板と裏板を直接つなげる唯一の棒であり、これによって音が裏板まで振動し、楽器全体に音が響くようになる仕組みです。魂柱の位置の1ミリや2ミリの違いで楽器の響きが大きく変化します。この調整は楽器職人でないとできない作業です。

新しく制作、取り付けてもらったコマ。文字は制作者の名前。

新しく制作、取り付けてもらったコマ。文字は制作者の名前。

中に書いてある文字は製作者、製作地、製作年。中に立っている棒が魂柱。

中に書いてある文字は製作者、製作地、製作年。中に立っている棒が魂柱。

ところが今回は2回も魂柱の調整をやり直してもらったにもかかわらず、響きがどうもいつもの感じに戻らなかったのでもっと良く見てもらうことにしました。楽器の入院です。結果、コマ(ブリッジ)が古くなっているのと、魂柱自体が短くなってしまっていたとのこと。木でできているので長期間、湿気や気温の変化、そして弦の圧力に耐えてきたものが変化するのは自然なことです。そこでコマも魂柱も新しいものを作ってもらい、取り付け、調整してもらいました。💸💸💸な金額でちょっと痛かったのですが、商売道具のメンテナンスは必要不可欠。でも、おかげで楽器は良い音を取り戻し、以前よりあたたかな音が鳴るようになった気がします。

古くななってしまってリタイヤした魂柱とコマ。文字は制作者の名前。

古くななってしまってリタイヤした魂柱とコマ。文字は制作者の名前。

使い捨てが当たり前の世の中ですが、皆さんも、楽器はきちんとお手入れして大事に、長いこと使ってくださいね。

圭祐君と綾乃ちゃんのオペラ鑑賞

こちら地元ニューヨークの誇るメトロポリタンオペラ。毎年クリスマスの時期になると子どもにもわかりやすい、「ヘンゼルとグレーテル」などのやさしいオペラを演目に出します。今年はモーツァルトの「魔笛」の短縮した英語バージョンが上演されました。オペラと言えば、普段は平均3〜4時間と長時間で、内容は古い王様や、ややこしい政治や愛の絡み合った物語、最後には誰かが死んでしまうお話が多いですし、外国語で歌われるため字幕を読まなければ何を言っているかもわからないので、馴染みのない方が多いかと思います。でも、魔笛はオペラ・ブッファと呼ばれるジャンル、わかりやすく言うとラブ・コメディなのでそんなオペラには馴染みのない人でも鑑賞しやすく、比較的シンプルなストーリー。

子どもでもわかりやすい内容で、かつ英語で上演されるオペラがあるとのことで、この機会を利用して当教室の生徒さんご一家がそろって見にいらっしゃいました。私がメトロポリタンオペラでエキストラとしてよく演奏しているので、私の出演している日を選んでお超し下さり、開演前に皆さんとピットで待ち合わせしました!

 
綾乃ちゃんとターッチ!

綾乃ちゃんとターッチ!

ピットへ遊びにきてくれた渡邉さんご一家

ピットへ遊びにきてくれた渡邉さんご一家

 

渡邉さんご一家は3人のお子さんがいらっしゃり、現在、上の2人、圭祐君と綾乃ちゃんがバイオリンを習っています。一番末っ子君はまだ歩き始めて数ヶ月のちびっ子ですが、お家で上の2人が練習していると一緒になってバイオリンを弾く真似をするのだそうです。このオペラにも静かにしていられるか、少し不安もあったものの、音楽を聴いている時はいつもとても静かになる正確なので、思い切って一緒に連れて来てくださいました。

このオペラを見に来る前に家であらすじを簡単に予習して来たのでストーリーを予め知った上で鑑賞。ご両親のこの配慮、素晴らしいですね!

 

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今回の短縮バージョンの魔笛は上演時間1時間45分。心配だった末っ子君も途中で泣いたりすることなく、オペラに熱中して静かに座っていたそうです。3人兄弟、そしてお父さん、お母さん、みんなとっても楽しめたようです。

皆さんも、オペラも含め、子ども向けオーケストラコンサート等、地元の楽団のウェブサイトなどで調べて足を運んでみてはいかがでしょう?

 

2017 New Year Greetings

Happy New Year to my Violin Family at Chihiro Fukuda Violin Studio!

 

I hope everyone had a nice, restful holiday.  We left last year on a high note with a successful holiday studio recital, which included 8 students, 2 teachers, and an accompanist. 

Wait, 2 teachers?!

Yes, it is not only Chihiro anymore.  We have a wonderful new teacher Robyn Quinnett, who has joined me in building a stronger and more successful violin studio.

Robyn is not only a wonderful teacher, but also a beautiful violinist.  She is a graduate of the Juilliard School, and currently pursuing her DMA at Stony Brook University.  Robyn and I met through the Opus 118 violin program in East Harlem in 2014.  She started as an intern/apprenticeship with me, and is a current teacher in the program.  Robyn has also won many awards from organizations including the Sphinx Organization, and is a founder of a chamber music and teaching festival at her home island of Montserret in the Caribbean.

When I began to think about expanding this studio, and realized I did not have enough time or energy to do so, Robyn came to mind first. I invited Robyn because of her wonderful musicianship, and natural instincts and ability of teaching.  We are very lucky to have her!  Now with her on board, I feel some of my dreams for this studio may come true!  I have exciting ideas for all students in our studio.  For starters, I will be planning an ensemble performance at the summer recital in June.  Music is made in harmony.  Music is most fun when you play in a group and “make” music together!  Given this time and what is going on around the world, I feel stronger than ever that we need to educate our children about tolerance, cooperation, and respect for one another.  Music cannot cure everything, but the experience of it can teach us something and help make the world a better place.   

Providing your child with music lessons is an investment to his/her future.  Robyn and I take that responsibility seriously, and we feel passionate about making a difference one child, one lesson at a time.  Thank you for being part of our studio, and keep your eyes out for an announcement for the June recital and ensemble rehearsals!

 

Love, Chihiro & Robyn

コラム 〜第11回〜

バイオリンのレッスンを始める適切な年齢というものはあるのでしょうか。教育・勉強熱心な日本人の方の中には色々な情報を読みあさり、バイオリンレッスンのお問い合わせをいただいた際に様々な質問をうけます。「6歳ではもう遅いでしょうか?」とか、「3歳から始めるのがいいと聞きました!」などなど。これらの情報はそれぞれに根拠はあると思いますが、それが個人個人に当てはまるかどうはケース・バイ・ケースです。

バイオリンは簡単に習得できる楽器・習い事ではありません。集中力、手や腕のコーディネーション、また、楽器を構える体力、スタミナが必要です。これらの発達には個人差が生じます。3歳で始められる子もいれば、6歳、7歳頃まで待ってから始める方が適切な子もいます。また、これまでにこちらのコラムでご紹介してきたとおり、レッスンを始めてすぐに曲が弾けないどころか、音も出せないバイオリン。地道な練習を何週間も続け、辛いと感じてもがんばれる根気が必要です。活発で常に変化や刺激の必要な小さなお子さんには向いていないかもしれません。しかし、そんな性格でもバイオリンが大好きだったら根気を育てながらがんばれるお子さんもいらっしゃるでしょう。

私がこれまでに担当してきた生徒さん達を見てきて感じるのは、まず、子ども達の発達は男女に差があるということ。女の子の方が一般的に幼少期の発達が早いです。ですから自然とバイオリンを始める適齢期が早まります。しかし、最初に申し上げたとおり、個人差がありますから、4歳で始められる男の子もいますし、6歳くらいまで待って始めた方がいい女の子もいます。張り切って、幼すぎるのにレッスンを始めてしまうと、進歩に時間がかかり、なかなか曲が弾けるようになれないので面白くない。面白くないからやめる。そんな結果になってしまうのはもったいないですね。ですから、バイオリンのレッスンを始める時期は、先生に直接会って相談する事が必要です。

反面、小学校高学年、中学生になってから始めるのは遅すぎるかと言えばそんな事はありません。バイオリンを習いたい!という強い気持ちがあるのなら是非とも習っていただきたいと思います。ただ、体の柔軟性が必要な楽器なので体がしっかり発達してから始めると、正しい姿勢に慣れるのに少々苦労する面は出て来るかもしれません。

細かい事を色々並べ立てましたが、最後に一番大切な事を申し上げたいと思います。バイオリンを含め、楽器を習わせてあげるという事は、お子さんの将来への投資です。音楽はよく『言語』の一つであるというふうに表現されます。音楽が表現・理解できれば、たとえ言葉が通じなくとも世界中の誰とでも分かち合う事ができるからです。コンクールに入賞したり、有名音楽学校に入れなければ楽器を習う価値がない、など極端な考えを持った人がまれにいらっしゃいますが、音楽は文字通り「音を楽しむ」ためのものです。バイオリンを習って弾けるようになれば、将来、この楽器と音楽を通して様々な人と知り合い、それぞれの世界を広められます。バイオリンを何歳からはじめようが、レッスンや練習に費やした時間とエネルギーは全て、価値あるお子さんの将来へつながるのです。

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

冬の発表会2016

ブログ掲載が少し遅れましたが、先日12月3日(土)当教室の発表会がミッドタウンのミチコ・スタジオにて無事終了いたしました。

今回の発表会では以前からレッスンを続けている生徒達の他、秋のバイオリン塾に参加した3人のちびっ子達が初めての演奏・演技を披露しました。バイオリンを触った事もない子ども達が、9月後半から週二回、計20回のグループレッスンを経て迎えた発表の場。レッスン中、なかなかうまくできない事があって諦めそうになったり、バイオリンを落としてしまって大泣きする(笑)などの事故もあったりして山あり谷ありの20回でしたが、3人とも一生懸命がんばりました。

レッスンで弓の持ち方を練習している様子

レッスンで弓の持ち方を練習している様子

バイオリンの構えの練習

バイオリンの構えの練習

発表会の舞台のバイオリン塾の3人

発表会の舞台のバイオリン塾の3人

基礎を大切にする当教室では、曲を何曲も覚えてたくさん弾くことより、楽器の構え方や弓の持ち方などを初め、姿勢をきちんとセットアップすることに重点をおきます。今回の3人はこの発表会で楽器の構えの披露、そしてE線のキラキラ星を私が時々手助けしながら演奏しました。バイオリン塾は初めてバイオリンを習うお子さんが短期レッスンを試す機会を作ったものなので、試してみた結果、「やっぱり他の楽器をやりたい」などという結果になって辞めるお子さんもたまにいらっしゃるのですが、この3人はみんなレッスンを続けていくことになりました。先生も大変嬉しいです。

その他、以前からバイオリンを続けている小学生から高校生の生徒まで、下はキラキラ星、鈴木教本の第1巻や2巻を勉強している子たちに加え、上はモンティ作曲の「チャルダッシュ」を演奏。色々なレベルの生徒がそれぞれにみんな良い発表をすることができました。

また、大変嬉しいことに、最近教室に生徒が増え、今回発表会に参加できなかった子を合わせると、10人の生徒が現在、当教室でバイオリンのレッスンを続けています。皆様がお友達へ当教室を推薦くださっているようで、そのおかげでレッスンを希望されるご家族のお問い合わせも増えております。

バイオリンを丁寧に教え、お子様の未来への貢献を目標としている私にとって、皆様のサポートが大変ありがたいです。約1年前からウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版、そして最近は紙面版、共にコラムもご掲載いただき、これからも引き続き、バイオリンを習うお子さんをサポートするご家族のためにも貢献していきたいと思っております。

発表会での初演奏!

発表会での初演奏!

後列、左から2人目がロビン先生

後列、左から2人目がロビン先生

最後に一つ、告知です。

発表会にいらしたご家族はご存知ですが、教室がたくさんの生徒さんで盛り上がってきており、私一人ではスケジュールがいっぱいいっぱいになっているため、今月より新しい先生を迎え、合同バイオリン教室を始めることになりました。新しい先生はロビン・クゥイネット先生。(Ms. Robyn Quinnett)発表会で最後に私と一緒にベートーベンのバイオリン・ビオラのためのデュオを演奏しました。ロビン先生は現在、ニューヨーク州、ロングアイランドにあるストニー・ブルック大学の博士課程に在籍中で、大学・大学院はジュリーアードで勉強されました。昨年度は私が務めていたOpus 118 Harlem School of Musicにてティーチャートレーニングに参加し、私の教えるクラスでバイオリンレッスンの手伝いと教法を勉強しました。彼女は現在もそこでトレーニングを続ける傍ら、演奏活動も忙しくこなしています。ロビン先生は素晴らしいバイオリニストであるだけではなく、生徒への教え方や接し方も丁寧で、先生としての良いセンスがあり、私と同じく基礎をきちんと教え、焦らず丁寧なバイオリンレッスンをする能力があります。日本語のレッスンはできませんが、英語でのレッスンを必要とする生徒さんはこれから彼女の教えに触れる機会があるでしょう。

一緒に教えてくれる先生が増えれば生徒さんも増やすことができます。そうすれば、教室全体のレベルも上がり、いつかアンサンブルクラスなどをできる日も来るかも知れません。

後日こちらのウェブサイトでロビン先生紹介のコーナーを設ける予定ですのでお楽しみに!

秋のバイオリン教室

ニューヨークでは大分肌寒くなり、秋が深まってまいりました。

ニューヨーク州、ハドソン・バレー。ハドソン川をマンハッタンから約一時間北上したこの地域の紅葉は10月後半が真っ盛り。

ニューヨーク州、ハドソン・バレー。ハドソン川をマンハッタンから約一時間北上したこの地域の紅葉は10月後半が真っ盛り。

9月頭にアメリカの長い、約2ヶ月半の夏休みが終わり、子ども達は学校生活へ戻りました。私も夏の間はモーストリー・モーツァルト・フェスティバルでの演奏活動に参加し、秋からはメトロポリタン・オペラや、NYCバレエ・オーケストラ中心の活動へ切り替わりました。当教室では夏休みはお休みしていた生徒達が普段通りのレッスンへ復帰し、新しい生徒さんも仲間入りし、活気が戻ってきました。

バイオリンの構え

バイオリンの構え

9月から始まった『秋のバイオリン塾』では3人のお子さんが参加しています。この「塾」は、バイオリンを習ったことのない、4才から6才のお子様が対象。週2回、全20回のグループレッスンを行います。レッスンではバイオリンのケースを正しく開けたり、真っ直ぐ立つ姿勢やお辞儀など、基本中の基本から順に、急がず、丁寧に、毎回45分のレッスンで学んで行きます。

現在、全20回のレッスンの丁度半分のレッスンが終わり、残り約1ヶ月間の練習の後、発表会を迎えます。音を出すまでも時間のかかる楽器ですが、生徒達は3人とも文句を言わず、(少なくとも先生の前では😊)地道な努力を重ねています。初回クラスから約1ヶ月半が経ちましたが、短い期間で、みんな集中力や努力をする力が成長してきているように感じます。カタツムリのような速度の進歩ですが、バイオリンを習うということは、このようにゆっくり、丁寧、確実に一つ一つのステップを学ぶことが大事です。基礎をしっかり組むことで次のステップを、より確実にクリアして行くことへつながります。

この生徒達が12月3日の発表会までにどこまで成長できるか、楽しみです!

 

コラム 〜第10回〜

よく、生徒さんのご家族に「我が子は練習をしたがらず、いつもケンカになって困っている」という風な相談を受けます。練習を習慣にして毎日のルーティンを確立するとか、練習チャートを作って目標を達成したらご褒美をあげるなど、以前にもいくつかアイデアをご紹介しました。今回はその他にアンサンブルやユースオーケストラに参加することを提案したいと思います。

音楽は一人で奏でるものではありません。むしろ、大勢で楽しむものですね。もちろん、独奏(ソロ演奏)のために作曲された曲もたくさんありますが、音楽をやっていて何が楽しいかというと、アンサンブルやオーケストラで他の演奏者と一緒に弾くことです。一番低い音域のチェロやコントラバスがベースをサポートし、キラキラしたきれいな高い音域のメロディーをバイオリンが歌い、中音域のビオラが真ん中を支え、息を合わせて美しいハーモニーを作り上げる、ある意味でオーケストラはたくさんの演奏者を合わせて作り上げる一つの楽器。アンサンブルの中に入り、皆と息を合わせて演奏すると、子どもたちはお互い、良い意味で刺激を受け、音楽的にも、人間的にも成長します。

一人で独奏曲を練習することは個人のテクニック習得に欠かせませんが、オーケストラなどに参加する場合、自分のテクニック以外の音楽的「勘」を磨くことにつながります。アンサンブルで演奏するために「息を合わせる」と一言で表現しましたが、それはシンプルなことではありません。指揮者を見ながらお互いの音を聞き、音色、音程、音量、テンポなどを合わせ、練習を重ね、音楽を作り上げていきます。この作業は神経を使い、多大な集中力を要します。ユースオーケストラでは1回のコンサートを準備するために数カ月間のリハーサルを重ね、時間をかけて合わせていきますが、その過程で子どもたちは曲を学ぶこと以上に全身で協調性を育んでいきます。

また、オーケストラ奏者としての私自身の意見ですが、リハーサルやコンサートを終えると、集中力を使い果たして疲れる反面、神経が落ち着き、静かで穏やかな気持ちになります。瞑想・座禅をした後の、心を静かにした状態に似ているかもしれません。このような経験はお子さんの人格を形成する上で大変有意義なものになるのではないでしょうか? ある程度楽器が弾けるレベルになったらアンサンブルやオーケストラに参加して、より深く、音楽を楽しむことを覚え、それを毎日練習するモチベーションにつなげていければ良いと思います。

ニューヨーク近辺で子ども向けのアンサンブルやオーケストラに参加できるプログラムをいくつかご紹介します。
(注)団体によっては同機関で個人レッスンを受けることを要する場合もありますので、各ウェブサイトの内容をよくお読みください。

●NYユース・シンフォニー(www.nyys.org/
●ISO(Inter School Orchestra of NY)(isorch.org/
●マネス音楽院Prep(www.newschool.edu/mannes/prep/
●マンハッタン音楽院プレカレッジ(www.msmnyc.edu/Precollege/Welcome-to-the-Precollege
●The School for Strings(www.schoolforstrings.org/
●ニュージャージー州、テナフライのJCC(www.jccotp.org/music-instruction

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

コラム 〜第9回〜

皆さんは普段、お子さんをコンサートなどに連れていらっしゃるでしょうか? しばしば、当教室に小さなお子さんを連れ、バイオリンを習わせたいという思いでご家族が相談にいらっしゃいます。その親御さんの思いは先生としては大変嬉しい限りですが、ナマの演奏は聞いたことのないお子さんがほとんど。テクノロジーの発達した現代ではYouTubeやiTunesなどを使い、ネットを通して簡単に色々な音楽に触れることができるようになっています。それはそれで便利で良いのですが、時にはコンサートへ足を運び、ナマの演奏に触れることをお勧めします。

例えば、ニューヨークフィルがコンサートで演奏する交響曲の響きを会場で体験するのと、同じ楽曲をCDなどの録音で聴くのには大きな違いがあります。弦楽四重奏などの室内楽コンサートを小さなホールで、演奏者の息づかいの見える距離で見ると音楽の情緒を全身で感じることができます。

バイオリンなどの楽器を習うということはまず、姿勢など、基礎をしっかり習得することが必要なのですが、このコラムでいつも申し上げてきたとおり、時間のかかる作業です。辛抱強さの強いられるその練習した果てに何が待っているのか、お子さんにはなかなか想像できません。見たことがなければ当たり前ですね。日頃から、コンサートへ行ってナマの演奏に触れ、本物の楽器の響きを聴くと、自分の目指す先(目標)がハッキリしてきて練習にも意欲が出るはずです。スポーツ観戦と似ていて、やはりプロの野球やサッカー選手のプレーを見ると子どもが「僕も/私も、あんな風になりたい!」と憧れるのと同じく、プロの演奏にインスピレーションを受けて、「いつかカーネギーホールのステージに立ちたい!」などといった目標を夢に、練習をがんばれるのではないでしょうか?

ただ、小さなお子さんを連れて夜遅くまで続くコンサートにはなかなか行けないというご家族もいらっしゃるかと思います。そのようなご家族向けのプログラムがニューヨークではたくさん行われています。リンカーンセンターでは一年を通して「リンカーンセンター・キッズ」と題して、子ども向け音楽イベント(多くが無料)が開催され、ニューヨークフィルでは「Young People’s Concerts」という名で、下は3歳から参加できるコンサートが企画されています。さらに、音楽の王道、カーネギーホールでは「カーネギー・キッズ」という、2歳から6歳の子ども向けプログラム、そして3歳から10歳向けの「ファミリー・デー」というプログラムなど、(こちらも多くが無料の)様々な、家族参加型イベントが行われています。

ネットでこれらを検索するとたくさんのイベント情報が見つかります。ほとんどが週末、無料で行われるので参加しやすいですね。ニューヨーク以外にお住まいの方も、地元の交響楽団やコンサートホール等のウェブサイトを探せば似たようなプログラムがあるかと思います。芸術の秋。この機にぜひコンサートに行ってみてはいかがでしょう?

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

夏はいつもと違う、音楽体験!

夏も残念ながら、もうすぐ終わりですね。

6月の発表会以来、しばらくブログはお休みになってしまいましたが、私はリンカーンセンターの夏の恒例イベント、Mostly Mozart Festival、そして数日間、子どものためのEMSストリングキャンプで教えておりました。

昨年もEMS (Elizabeth Morrow School)のストリングキャンプのことをこちらブログで書きました。今年は当教室からは圭祐君が参加。そして、私も先生として初参加しました!

この230人の、バイオリン、ビオラ、チェロ、ハープを弾く子ども達の集うキャンプではまず、朝一番に全員で音階等を弾いて、体を動かしながらウオームアップをします。ディレクターのアメリア先生はヘッドセットのマイクをつけ、先頭に立ち、元気よく約20人の先生達と、40人のカウンセラーと一緒になって生徒達全員をまとめて行きます。

朝のウオームアップの様

朝のウオームアップの様

ウオームアップが終了するとセクションごとに分かれてクラスが始まります。

生徒達は、年齢やレベル別にオーケストラのグループに分担され、それぞれ与えられた曲のリハーサル・練習を一日中行います。また、期間中、ゲストアーティストが招待され、生徒達とともに演奏したり、子どものオーケストラを長年教えていらっしゃる指揮の先生を迎えてのリハーサルも行われます。その他、休憩時間に外でスポーツや遊びをする時間もあるので、一日中スケジュールがビッチリ組まれています。

5日間しっかり学び、楽しく遊んだ後、最後はまとめのコンサートが行われます。圭祐君のようなちびっ子のジュニアたちから中学生の大きな子達まで、それぞれレベル別のグループにわかれているものの、全員で演奏する曲目もいくつかあり、最後はみんなでパッヘルベルのカノンを演奏して締めます。230人のカノンはちょっと特別な感動をもたらします。

最終日のコンサートの様子。左は生徒達のオーケストラ。右側にその演奏を見に来た家族達。

最終日のコンサートの様子。左は生徒達のオーケストラ。右側にその演奏を見に来た家族達。

圭祐君はその「カノンをみんなで弾くとすごくきれいだった!」と、喜んでいたそうです。一人で自分の弾くパートを練習していると全体の響きがどんな感じになるのか、想像できなかったのでしょう。圭祐君は初日は慣れない英語と、知らない人ばかりで、緊張していたようですが5日間のキャンプ中にお友達もでき、新しい曲も覚え、楽しく過ごせたようです。初めてのアンサンブルも、とっても良い経験になったのではないかと思います。バイオリンの練習は地道で、進歩も時間がかかりますが、このような場でいつもと違う音楽の経験をできるのは素晴らしいことだと思います。圭祐君にもこれからもがんばっていってほしいと思います。

 

 

 

コラム 〜第8回〜

今回は先生の選び方についてお話ししてみたいと思います。このコラムを読んでくださっている方にはぜひとも当教室、福田千尋バイオリン教室へ! と、書きたいところですが(笑)、地理的に必ずしもそういうわけにもいかないと思いますので、探し方をご紹介いたします。一口にこれが一番確実! という簡単な選び方はないものの、いくつかポイントをおさえれば少しは当てができるしょう。

まず念頭においてお考えいただきたいのは、長く、同じ先生で続けられるよう、選ぶこと。バイオリンは、先生によって少しずつ教え方が異なりますから、コロコロ変えてしまうとお子さんが混乱する原因になりやすいです。また、一対一の習い事ですから、先生・生徒さんの間柄はとても個人的で、お互い、慣れるまで時間がかかります。先生がお子さんの性格を熟知して対応できるようになるには数カ月かかりますし、お子さんも初めての先生の前では緊張しますからレッスンを始めてすぐにしっくり来ないこともあるかもしれません。

長く付き合える先生を選ぶときに一番大事なのは、お子さん、そしてご両親となるべく相性の合う先生を見つける事です。経験豊富であったり、お友達から推薦を受けたからといって同じ先生が自分と合うとは限りません。では、相性をどうやって見極めるか。残念ながら簡単な方法はありません。最初はうまくいかないような気がしても、数カ月たってようやくしっくり感じる事もあります。でも、初めて体験レッスンや面会に行って先生に会う時にこういう質問をしてみると良いかも知れません。

●どのようなメソードや教本を使っているのか
教え方がはっきりしている先生。姿勢を重視し、基礎を丁寧にゆっくり教える方針の先生がお勧め。それをご家族にきちんと説明してくださる先生がお勧め。

●練習はどのくらいするべきか
毎日少しずつしてください、と言われるはず。年齢やレベルによって練習時間は違ってきます。

●親がレッスンについて行くべきか
親がレッスンについて来なくても良いという先生は経験が少ないかもしれません。子どもによってはお母さんやお父さんが一緒にレッスン室へ入らない方が集中出来る子もいます。そういうお子さんでも、小さいうちは少なくともレッスン最後の5分くらいは親に入っていただき、今日教わった事を復習し、親の前で発表し、家で練習出来るようにする必要があります。

●発表会等、子どもの演奏機会が年に何度あるか
年に最低1〜2回は発表の場があるのが理想的。ゆっくり時間をかけて習い、磨き上げた曲を人前で演奏するのも大事な経験の一つ。

●レッスンを休む場合のポリシー
アメリカの場合、たいがい24時間以上前に連絡する決まりですが、教室や先生によって違う場合もあり。前もって聞いておくと良いでしょう。

都会に住んでいると先生の選択肢が広がりますね。でも選択肢が多すぎてどこから手をつければ良いのかわからない! と感じるでしょう。最初に当たってみると良いのは次のいくつかの情報源。

●たくさんの先生を雇っている地元音楽教室に入会する
【長所】もしも最初についた先生と相性が合わなかった場合、他の先生に変えてもらえる可能性があり。教室システムができあがっているのでトラブルがあった時に対応してくれるマネージメントの存在。
【短所】人気な先生は予定が一杯でなかなかとってもらえる確率が低い。年間契約が必要な場合もある。レッスンをたくさんお休みすると後で補講してもらえない可能性あり。

●すでにレッスンを受けているお友達等に紹介してもらう
【長所】共通点のある人(お友達)に紹介してもらうのですから、条件が合う可能性高し。すでにレッスンを受けている友達に詳しい情報を前もって集められる。
【短所】お友達と相性が合うからといって、自分と相性が合うとは限らない。

●ネットや新聞で検索してみる
【長所】周りの影響なく、焦らず自分に合った先生探しを できる。
【短所】実際に習っている生徒の感想を集めにくい。リサーチに時間がかる。

最後に、無理なく通える場所と時間にレッスンが行われるか、という事もお考えになると長続きしやすいはずです。あまり遠すぎたり、地理的に通いにくい場所だと最初はハリキって一生懸命通えても、赤ちゃん等小さな兄弟がいたりするとだんだん通うのが不便になってしまうことも。引っ越し等でやむを得ない場合はしかたないですが、先生によってメソードが違ったりすると子どもはこんがらがってしまいますから、なるべく長い事同じ先生につく事を考えて先生探しすると良いでしょう。

目に見える効果が短期間では現れにくいバイオリン。年単位で長く続ける事が成功の秘訣です。そのためには教室や先生選びは焦らず、慎重にすることをお勧めいたします!

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

 

 

コラム 〜第7回〜

米国では6月末からすでに夏休み。2カ月以上の長く、楽しい期間ですが、キャンプや旅行などでバイオリンの練習を毎日続けるのが難しい時期でもあります。特に、レッスンや発表会などがない場合、目標なしに練習するのは大人も子どもも、モチベーションが上がらずサボりがちになってしまうのは自然なことだと思います。

この、サボりがちになってしまうことを避けるには、まず、夏休み期間中もできる限りレッスンを続けるということが必要です。地元米国人の方の中には夏休みは楽器にも触らず、完全に休むご家族もいらっしゃいますが、そうすると新学期にレッスンを始めた時、夏休み前に弾けていたこともできなくなってしまいます。せっかく何カ月間もレッスンと練習を続けて上達したのに、長い夏休み(2〜3カ月)の間何もしないと、とってももったいないことになります。

また、子どもが姿勢や音程などの細かいことを自分で気付いて直すのはほとんど無理です。毎日しっかり練習を続けていたとしても、個人によって様々なクセが発生します。それをレッスンで先生に指摘されれば気付いて直すことができますが、レッスンが全くなければ改善されないまま、間違った弾き方で練習を続けてしまうことになり兼ねません。ですから夏休みでも、完全にお休みせず、できる範囲でレッスンは続けることをお勧めします。

さらに、米国では小さなお子さんでも参加できる音楽キャンプがたくさんあります。ニューヨーク市近辺ではアッパーウエストにある、カウフマン・ミュージックセンターや、ニュージャージー、イングルウッドのEMSの夏のストリングキャンプ等、その他様々な教育施設で行われています。ただ、これらは冬から春にかけてレジストレーション(登録)とオーディションが行われるので早めに計画を立てておく必要があります。これらのキャンプに参加する場合、準備していかなければならない課題曲が出されるので、練習をすることが必要になります。このような目標は自然と練習するモチベーションにつながるでしょう。

夏休み期間は普段、学校のある期間と違う、毎日のお子さんのルーティン(習慣)をセットアップしてあげると良いでしょう。以前にもこちらのコラムでご説明したとおり、バイオリンの練習でも、宿題をすることでも、毎日の習慣にすることによって子どもは非常に伸びます。夏休みは計画的に勉強や練習を毎日少しずつやりながら、バランスよく遊びの時間も設けて楽しく過ごせるといいですね。

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

 

コラム 〜第6回〜

親子でバイオリンを習うことについてよく質問を受けます。

「娘・息子と一緒にレッスンを受けるのはどうでしょうか? 子供にとってプラスになるのでしょうか?」

一言でお返事を申し上げると、「Yes」です。
世界的に有名なスズキ・メソードでは、お子さんがレッスンを始める前に保護者の方がレッスンを受けることを義務付けています。なぜそうするかというと、「子は親を見て育つ」から。お時間のあるときに読んでいただくこともお勧めします、スズキ・メソードの生みの親である鈴木鎮一さんの著書、『愛に生きる 才能は生まれつきではない』。この本の中で詳しく書かれておられます。例えば、日本語を話す家庭に生まれた子が日本語を話すように育つのと同じく、バイオリンを練習する親の姿を見て子どもは自然とそのマネをしたがるようになる。このマネをしたがる、という子どもが生まれ持った本能をうまく利用して自然にバイオリンをしたいという意欲を引き出すことが目的です。音楽家の子どもが音楽家になったり、医者の子どもが医者になることがよくあると思いますが、それは子どもが親を見て(親の影響を受けて)育ったから、という論理です。

当バイオリン教室では保護者の方にレッスンを受けていただくことを義務付けてはいませんが、ご興味のある方にはぜひお子さんと共に習っていただくことを歓迎します。ただ、一つ大人の方が初めてレッスンを受けるにあたって知っておいていただくと良いポイントがありますのでここでご紹介したいと思います。

大人の体は小さな成長途中の子どもと違い、硬くなっています。特に生まれて初めてバイオリンを手にとる大人の方にとっては楽器を構え、弓を正しく持ち、上下に動かす動作はとても不自然に感じるでしょう。考えてみれば、もともと不自然な格好で演奏する楽器なので当たり前なのですが、小さな子どもは体がまだ柔らかいため、比較的自然に慣れることができます。また、私がこれまでにレッスンさせていただいた初めてバイオリンを習われた大人の方の中には「すぐに憧れのあの曲が弾けるようになる」と思われる方がおられました。レッスンを始めて数週間たった頃にやっと開放弦をきれいな音で弾けるようになり、キラキラ星さえもまだ弾けないという現実にガックリ。最初の期待・想像していた感じと現実があまりにも異なり、やめてしまう方がいらっしゃいました。

ギターやピアノと比べて弾くのが難しいバイオリン。「なかなか上手になれない」という現実をネガティブにとらえず、短期間のゴールより1年間諦めず続けるなどという目標をたて、細く、長く続けることをお勧めします。例えば、開放弦をきれいな音で、弓も左右にずれず、真っ直ぐに保って弾けるようになった等という小さな進歩を一つ一つ積み重ねていき、1年間で1〜2曲きれいに弾けるようになろう!という目標。そうやってコツコツ続けられれば、一緒にレッスンを受けるお子さんも諦めずにがんばる親の姿を見て、そのお手本に倣うでしょう。長く続ければ、お子さんとの重奏などもできるようになりますからとっても楽しくなります。それくらい弾けるようになれば親子ともにモチベーションも高くなりますね。

子どもは、親や周りの大人のことを、私たちの想像以上によ〜く見ています。その素晴らしい習性を上手に利用して、私たち大人は良いお手本となって導いてあげられるといいと思います。

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。

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コラム 〜第5回〜

日本人のご家族を相手にバイオリンを教えると勉強熱心な保護者の方が多く、こちらから説明しなくてもレッスンに一緒に通い、内容をメモしたり、ビデオを録って家で親子一緒にしっかり復習・練習して来られるので大変嬉しいことです。私はハーレムの音楽教室でも教えているため、地元アメリカ人もたくさん教えています。中にはバイオリンの先生をつかぬ間のベビーシッターのように考えてらっしゃる方もいらして、「お子さんと一緒にレッスンに通って、一緒に勉強してください」と説明しなければならない事が非常に多いです。小学校高学年か中学生くらいの、自己判断能力がある程度発達した年頃になれば生徒さんが一人でレッスンに来ても大丈夫でしょう。でも、小さいうちはそうはいきません。

アメリカ人と日本人では文化が異なるため、このような違いが出てくるのは当たり前ですが、アメリカ社会の中で子育てする日本人の皆様にはバランスを取るのが難しい事もあるようです。以前教えていた日本人の生徒さんのお母様にこんな相談を受けたことがあります。

「練習しなさいと自分の子を叱ると、アメリカ人のお友達のお母さんに『あんまりガミガミ怒ると良くないよ』と言われるんです」

当教室へバイオリンのレッスンに通い始めて何カ月か経った頃に受けた相談。このご家族は駐在で2年間のニューヨーク滞在中、お子さんを地元公立小学校に通わせ、お母様はせっせと英語のレッスンに通い、アメリカ生活に一生懸命なじむ努力をしていて非常に感心させられるご一家でした。お子さんはとっても才能があり、お母様もレッスンについて来て一緒に学び、見る見るうちにたくさんの曲を習得して上達の速いお子さんなのですが、毎日の練習は、もちろんいつも楽しいわけはなく、お母さんに何度も言われてようやくやるという感じの、言ってみればごく普通の状況。でも、好奇心旺盛で、のびのびとしていてバイオリンのレッスンに来ればしっかり集中できるので好感の持てるお子さんでした。日本で育った私から見ればごく当たり前の、遊ぶ時は存分に遊ばせ、やらねばならぬ事はケジメを付けてキチっとやらせる、バランスのとれたご家庭だと思ったのですが、アメリカの一般家庭と比べると考え方が少し違うのです。

日本人でない、地元の生徒さんで何週間も練習してこない事が続くので保護者の方に「練習できていますか?」と聞くと、「練習しろと言うとケンカになるので無理に練習させていません」「忙しくて時間がないんです」等、もはや諦めている状態の答えが返ってくる事が多いのです。せっかく大金を払って通っているレッスン。先生も一生懸命、お子さんに成功してほしいという思いで教えているのにこれでは苦労が水の泡。国や文化によってそれぞれ教育方針は違いますが、最終的にはそれぞれの家庭で一番大切なもの「プライオリティー」を決めてそれをお子さんのために一生懸命応援してあげる事が良いと思います。大人になってからの人生、楽しい事ばかりではなく、苦労する事も出てくるのでバイオリン等の習い事を通して子どもなりに勉強させてあげるのが愛なのでは? 最初は憧れで習い始めても、練習は学校の宿題と同じで楽しい作業ではありません。でも、その作業を続ける事によって最初は弾けないと思っていた曲が弾けるようになり、辛い事でもがんばって続ける、という事に意味を見出すのです。

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。