コラム 〜第3回〜 『他のお稽古ごとはほどほどに』

〜第3回〜

 

『バイオリンレッスン成功の秘訣』 その二

 

当教室に初めてバイオリンレッスンにいらっしゃるご家族に必ず説明することがいくつかあるのですが、その中で一番だいじなのは「毎日練習する事」です。小さなお子さんならたった5分でも良いですからバイオリンに毎日触れてください、と説明します。なぜならバイオリンで(ピアノやフルート等、どんな楽器も)体の感覚で、こまかい動きを覚えるには同じ動きを繰り返すことが必要だからです。バイオリンで上達し、進歩するためには週1回のレッスンに通っただけでは足りないのです。練習してこない生徒さんは前の週に比べ進歩がないばかりか、先週レッスンで習ったこともできなくなっている場合が多いです。

 

先週習ったことができなくなっていれば、今週のレッスンでそれを繰り返す必要がありますよね。それが毎週、毎週続いてしまうとだんだんバイオリンが楽しくなくなってしまい、興味を失い、バイオリンをやめてしまうということにつながることもあります。 練習をできないという理由はご家庭によって様々ですが、ニューヨークで教えていて多いのは幼稚園や小学校の放課後、毎日ビッチリ習い事で予定がうまっていて時間がない、という例です。バイオリン、ピアノ、水泳、サッカー、バレエ、塾、等々お子さんに色々経験させてあげたい気持ちはわかるのですが、できれば習い事は2つくらいにとどめ、その2つに集中して取り組める環境をつくってあげるのが理想的なのではないかと思います 。 学校、習い事、宿題で週の予定が埋まってしまっている子供は余裕がなく、いつもレッスンに来ると疲れていて集中力に欠ける傾向があります。大人でも同じですよね?一日中ビッチリ仕事や家事等を休みなくしていると心に余裕がなくなってイライラし始め、物忘れが増えたり、仕事がはかどらなくなったりしませんか?

 

また、私が個人的に感じるのは、子供には、子供の時にしかできない、想像力を使って遊ぶ時間が必要だということです。思うままにお絵かき、ねん土遊び、積み木や、様々な「ごっこ」遊びをすると、想像力を高める事ができるでしょう。週の間にある程度、学校や習い事から離れ、心のおもむくままに遊べる時間をバランスよく組み込んであげると、子供はのびのび育ち、バイオリンのレッスンにいくと新しい事を吸収してグングン可能性を広めていけるのではないか、と思います。

 

最初に申しあげたように、楽器のレッスンを受ける場合、水泳やサッカーなどと違い、家での練習が必要です。 同じことを何度も繰り返し練習すれば、難しいと感じることも、少しずつできるようになっていくでしょう。週1回のレッスンでしか楽器にさわらなかった場合、なかなか体がこまかい動きに慣れることができません。でも放課後の時間に余裕があれば無理なく練習する事ができますよね。プロの音楽家になっても練習は怠れません。演奏したことのない曲は特に、また演奏経験のある曲でも難しいパッセージがあれば何度も繰り返し、指や腕が感覚を覚えて確実に弾けるようになるまで練習します。そして大きな演奏会が近くなると、体調管理し、練習時間と、体を休む時間のバランスを取りながらスケジュールを調整します。そう考えれば、小さな子どもに自由時間が必要なのは、もちろんのことなのでは?と思います。お子さんの放課後の習い事はほどほどにバランス良く組みましょう!

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。