コラム 〜第2回〜

〜第2回〜

 

『バイオリンレッスン成功の秘訣』 その一

 

第1回でご紹介した苦楽混同したバイオリンレッスン。いつも楽しいわけではないバイオリンのレッスンを通してどのように壁を乗り越えて行くか。私が実際に担当した生徒さんを例にとってまず一つご紹介したいと思います。

 

小学4年生のときにご家族の転勤でニューヨークへ 引っ越して来て、たまたま転入した地元小学校にオーケストラプログラムがあった事をきっかけにバイオリンに興味を持ち、レッスンに通い始めたAちゃん。片道約1時間をかけて毎週、当バイオリン教室へ通い、レッスン中、お母様は大事なポイントをメモされたり、ビデオを録られたり、家で習った通り正しく練習できるよう大きくサポートされました。そんな中、レッスンを始めて数ヶ月後、お母様から相談を受けました。

 

「家で練習するとき、弓の方向が曲がっている等、レッスンで先生に言われたことを直していない、と注意するとケンカになるんです。」

 

これは良くあるお話で、バイオリンを習う過程でほとんどのご家庭で起こることです。何を隠そう私自身も子供の頃同じ経験をしました。正しく練習することと、楽しみながら練習する、この2つの間のバランスは難しいところだと思います。あまり注意しすぎると親子関係が辛くなりますし、だからといって何も言わなければ子ども好き勝手な方法で練習してしまう・・・。このお母様の場合、素晴らしいのはケンカ問題をすぐに指導者(私)に相談されたことだと思います。相談していただければ指導者は色々な解決方法を知っていますからアドバイスすることができます。練習時にケンカになってしまうことを恥ずかしい、と感じてなかなか相談できないご家族もいらっしゃいます。そういうご家庭では問題がなかなか解決せず、悩みが徐々に大きくなってしまい、場合によってはバイオリンを止めてしまうという結果に至ることも。

 

この『練習時ケンカ問題』について。お母様はレッスンでビデオに先生の話した事、正しい姿勢や音程等を録画してあるのでそれをAちゃんに注意しているのですが、Aちゃんは「うるさい!」と自分の方法で練習したい。でも自由に練習していたらレッスンで注意されたことが直されず、進歩につながらないと感じるお母様の不安。それがケンカの原因です。

アドバイス1〜2週間、注意することを控え、自由に練習させてみましょう。もちろんその間、上達は少し滞るでしょう。生徒さんによって個人差はありますが、練習してきたのにレッスンで先生にまた同じ事を注意されると 、徐々に直さなければ行けない細かい部分に自分で気付き始めるようになることが多いです。そして、次第に家で練習中に家族に注意されると「うるさいと思っていたけど、言われている事に一理あるかも?!」という事に気付くきっかけにつながることも期待できます。

 

Aちゃんにとってはこれが最初の壁となりました。その後たくさんの壁に直面し、お母様にもその都度相談を受け、色々な解決法を一緒に模索しました。家での練習を初め、様々な山や谷を乗り越える事が出来たAちゃんの成功の秘訣の一つにはお母様のコミュニケーション能力にあったと思います。

先生はたくさんの生徒さんを見て来ています。子どもの事を一番良く知っているのは保護者の方ですが、先生は、生徒さんが教室でしか見せない一面を見ていたり、子ども相手のプロだから知っている知識を持っています。問題を相談せず悩んでしまうと、悩み事が大きくなりやすいですが、すぐに相談するとすんなり解決する場合もあります。レッスンに関する悩み事を指導者にうち明けるだけでも気持ちが軽くなることもあるかもしれません。

 

バイオリンに関する疑問や困りごとをなるべく早めに相談されたことや、 一つ一つ壁を乗り越えられるよう、根気強く応援されたAちゃんのご両親のサポートはとても素晴らしいと感じました。バイオリンを永く続けるにはそれぞれのご家庭でのこのような協力は大切なポイントだと思います。Aちゃんは大きな壁に打ち当たって悔し涙する事もあり、それでも諦めずに一生懸命な生徒さんで、毎回それをクリアするたびに自信がついて行きました。発表会等で演奏がうまく行くと大きな笑顔を見せてくれたのがとっても印象的でした!

 

*このコラムはニューヨーク・ウィークリー・ビズ紙さんのオンライン版に掲載されました。